クリステンセン「ジョブ理論」の要約・書評

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「インベーションを予測したり持続させたりすることって難しいですよね。イノベーションが起こるのは運まかせ。そう思ってる人が多いのではないでしょうか。
『ジョブ理論』は、運に頼ることなく、イノベーションを引き起こすことを可能にさせてくれる考え方を教えてくれる一冊です。

イノベーションを引き起こす – 「ジョブ理論」要約

「ジョブ理論」の「ジョブ」とは、顧客が自分の進歩のために片付けるべきことを指します。
つまり、顧客は「ジョブ」を成し遂げるために商品を購入するという考え方です。日常生活で当たり前に行なっている「歯を磨く」「洗濯物をする」「掃除をする」などが「ジョブ」に当たります。

この顧客が行いたいこと「ジョブ」を中心に考えて、マーケティング・商品開発をすることが、「売れる」製品を作り、イノベーションを引き起こすと本書は述べています。顧客の片付けるべき「ジョブ」が商品性と合致すれば、顧客はその商品を繰り返し使用するようになり、離れていくことはない。明快な片付けるべき「ジョブ」と事業内容を合致させたブランドは、「ジョブ」が発生するたびに顧客の心に浮かぶ強いブランド力を持つようになると述べています。

顧客の振る舞いを変えるだけの理由を考える

顧客の行いたいことを考えるだけではなく、顧客の振る舞いを変えるだけの理由も商品開発の際に考えなければならないと本書は述べています。ある商品が「雇用」されたということは、ある商品は「解雇」されたということです。新しい解決策に変えようと、顧客の心を動かせなければ、どれだけ「ジョブ」を考えても意味はないとも本書は述べています。」

「大学で経営学を専攻しました。
経営学の教科書的な位置付けにあたる本にも面白い本はたくさんあるのですが、そういった本は考えが変わるというよりも、「経営学とは何か」というものを教えてくれるものなので、ここでは取り上げません。
ここでは、目から鱗というか、読んだ後に私自身の思考の幅が広がったと思う本を紹介します。

経営学者の書いた本
・沼上幹『経営戦略の思考法』日本経済新聞出版社、2009年
・楠木建『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社、2010年
・入山章栄『世界の経営学者はいま何を考えているのか』英治出版、2012年
・クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』翔泳社、2001年」

「顧客が行いたいことである「ジョブ」を見つけるには?

5つの方法があると本書は述べています。

  • 1つめは、生活の中の身近なジョブを探すこと。自分の生活を見直し、顧客の生活を観察することで、人は何を片付けるべき「ジョブ」だと判断するのか理解することが出来ます。
  • 2つめは、顧客が何も雇用していない状態である「無消費」と競争すること。企業は市場シェアを奪い取ることだけに目がいきがちですが、まだ発掘されていない需要を見つけようと言っています。
  • 3つめは、人々のやりくりや代替行動に着目すること。顧客が間に合わせの策で問題解決しているものはないかを見つけ、深く掘り下げる必要があると説いています。
  • 4つめは、人々がやりたくないことに意識を向けること。人がやりたがらない「ジョブ」はイノベーションの卵であり、やりたくない「ジョブ」を避けるためなら、人はその商品に飛びつきます。
  • そして5つめは、商品が想定外の使われ方をしていないか観察すること。企業が想定していない使い方で顧客が使用していた場合、そこにはイノベーションのヒントが隠れています。例えば、重曹は本来料理に使用するものでしたが、掃除に使っている顧客が多かったことから、重曹を使用した掃除グッズが販売されるようになりました。

この5つの方法を使えば、顧客は本当に欲しているものは何なのか分かるようになると本書は述べています。

まずは『ジョブ理論』の要約を読みたいかたへ

本書は、言い回しが複雑で、読んでいくうちに、混乱してしまう方も多いでしょう。

そんなときにおすすめしたいのが、10分程度で読める要約を提供する「flier(フライヤー)」です。このサービスでは現在(2017年6月時点)、『ジョブ理論』の要約(+レビュー)を無料で楽しむことできます。本書は2017年8月1日発売予定ですが、「flier(フライヤー)」を使えば要約はすでに読めてしまいます。「ジョブ理論」を実際に実行した企業の具体例も書いてあるため、理解しやすい要約ですよ。

「flier(フライヤー)」は、不朽の名作からビジネス書まで、さまざまな本の要約を提供する月額制サービスですが、本書のほかにも20数冊の要約は、なんと「無料」でチェックすることができます。またこれらの要約は「各分野の専門家」によって作成されたものなので、「質」も保証されている点が特徴的です。

ぜひこの機会にアプリをダウンロードして、読んでみてください。

ジョブとは

「新規事業が失敗する最も大きな原因は、ターゲットとする顧客が欲しくないモノを作ってしまうことにある、と言われています。

ピーター・ドラッカーは、「事業の目的とは顧客の創造である」と言及しています。さて、今回は、顧客の真のニーズを知るための手掛かりとなるツール「顧客ジョブマップ」をご紹介しましょう。顧客ジョブマップは、先日来日したクリステンセン教授が推奨するジョブ理論をベースにした「成果指向型イノベーション(Outcome-Driven Innovation)」※1)という方法論で紹介されているツールです。

ジョブとは、プライベートであれビジネスであれ、私たち人間が生きていくためにしたいことやしなければならないこと全てを指します。それは、人間の基本的な欲求(例.食事をする)、実現したい目標(例.エベレストに登る)、解決すべき問題(例.病気を治す)、片づけるべき用事(例.掃除をする)を含みます。身体的な活動(例.運動をする)だけではなく、精神的な活動(例.リラックスする)もジョブに含まれます。
ジョブ理論をベースとする「成果指向型イノベーション」は、

  1. 顧客は何らかのジョブを成し遂げるためにプロダクトやサービスを雇う
  2. 顧客はジョブを上手く成し遂げる上での評価基準(望ましい成果)をもっている
  3. より上位のジョブは複数のステップから構成されるプロセスをもっている
  4. 顧客はジョブを成し遂げる上で妨げとなる制約や障壁をもっている

というマーケティング上の前提から成り立っています。

よくあるミスの1つに、プロダクトやサービスを雇っている状態としてジョブを定義してしまうことがあります。例えば、「電話をかけること」はジョブではなく、「誰かと連絡をとること」が正しいジョブです。真のジョブを発見するには「なぜ?」と問うことが役に立ちます。

同様に、休日に家族を映画館へ連れていくマイホームパパは、「家族サービスをすること」がジョブかもしれません。マーケティングまたはプロダクト/サービス開発担当者として、個人的ジョブ(例.良い父親でありたい)や社会的ジョブ(例.家族や近所から良い父親と認めてもらいたい)といった見逃しがちな感情的ジョブを発見することも非常に重要です。

さて、より上位のジョブは8つのステップをもつ普遍的なジョブプロセスをもちます

抽象的な表現なのでピンとこないかもしれませんが、「海外旅行をする」、「彼女(彼氏)とデートをする」、「夕食の支度をする」、「納税申告をする」といったジョブを考えてみればお分かりになるでしょう。

私たちは、このようなジョブを成し遂げるために複数のプロダクトやサービスを雇っていることがお分かりになるでしょう。

このジョブプロセスは基本形ですので、カスタマイズしても構いません。重要なことは、皆さんの価値提案とそれを実現するためのプロダクトやサービスが、どの顧客ジョブに対応しているものなのかを検証すると同時に、他のジョブにも手を差しのべる機会があるか考えてみることです。

「破壊的イノベーションは最近誤用が多い」

と、クリステンセン教授は言う。なぜ彼は警鐘を鳴らすのだろうか。

1995年に教授がこの言葉を導入したことを考えれば、多用されるほど概念が普及し、彼の理論が世の中に受け入れられたことは嘆くようなことではないはずなのだが…。

先日の講演では、3,000人もの熱気ある観衆を集めた会場で「経営理論はしばしば非実用的だと非難されている」と切り出した。しかし、理論とは意図した結果を得るために、誰もが用いる因果のモデルと捉えると、いかなる経営者もよい結果を出すため “貪欲に“経営理論を操っているのが現状だと論じた。

意識しているかどうかは別にして、経営判断は経営者の持つ「理論」に基づいて行われるという考え方だ。したがって、優れた戦略を立てるためには、状況に応じた適切な理論を用いていくことが求められる。そのように実務家に役立つ示唆を提供するのがクリステンセンの言う「理論」なのである。理論をむやみに当てはめ、どのようなイノベーションも「破壊的」だとしてしまうと、「使えない」理論となってしまうことを危惧している。

例として、UBERは破壊的イノベーションの特徴を持っていないため、今後の道筋は予測ができないと最近のHBR記事で書いている。

HBR記事: “What Is Disruptive Innovation?”
https://hbr.org/2015/12/what-is-disruptive-innovation

では、何のために破壊的イノベーション理論は存在するのだろうか。

破壊的イノベーション理論は、「競争反応 (Competitive Response)」を予測するために使えるとしている。新しい技術やビジネスモデルを提げて参入してくるベンチャーにどう対処したらよいか、もしくは新しいビジネスの競争相手を失意させ、自社が成功する上で不可欠な理論だと筆者は考えている。

アメリカの自動車会社は、日本製の安い小型自動車が参入してきた1960年代に、日本車を脅威だとはとらえずに、似たような小型車を作ることをしなかった。
日本の自動車メーカーにとってみれば競合のいない環境で、ゆっくりと市場を開拓することができたのだ。

当時のトヨタ車は今のように品質が評価されていたというよりも、大学生にも買えるような価格で、それまでは自動車を買えなかった層を顧客として発掘することで伸びていった。アメリカの自動車会社は小型車を作ることができなかったのではなく、利益率が下がるような製品を開発する動機が生じなかったのだ。利益率が低いながらも確実に成長する市場を獲得すると、次第に日本メーカーも「持続的なイノベーション」によって技術力を高め、アメリカ車が得意としていたハイエンド市場を奪ったのである。先日の講演においてクリステンセンは、ホンダのスーパーカブやキヤノンの小型プリンターなどの事例を挙げ、かつて日本企業が、はるかに能力や資源で及ばないアメリカの巨大企業を苦しめていったかを語ってくれた。」

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